海に囲まれた日本では古来より生活に密接している潮の満ち引き。それがなぜ引き起こされるかを子供へ正確に説明できますか?
時間によって海面が上昇したり下降したりする現象である潮の満ち引き=潮汐(ちょうせき)はなぜ起きるのでしょうか?
潮の満ち引きは航海や漁業に影響し、特に海洋国家である日本においては昔から生活に密接している自然現象でしょう。
潮汐が起きるメカニズムは月の引力であることは有名ですが、まずはそこの解説をし、それを知ると必ず気になってしまう「月と反対側の海面も上昇するのがなぜか?」というさらなる疑問も解説していきます。
潮の満ち引きは月の引力によって発生する
地球の衛星である月は27日の周期で地球の周りを公転しています。
月は地球の引力により引き付けられていますが、それと同様に地球も月の引力によって引き付けられています。
その月によって生じる引力が海を引っ張り海面を上昇させているのです。
また、引力を発生させているのは月だけでなく太陽もあります。地球からの距離が月の約38万kmと比べものにならないほど遠い(約1億5000万km)ため、月の引力ほどの力は発生していませんが、月と太陽が直線に並んだ時はいつもよりさらに海面が引っ張られます。
これを大潮と呼びます。
月の引力以外にも、海流や水温・塩分濃度、気圧、湾岸の形状など種々の要因によって潮位はいくらか異なってきますが、主要因は月の引力です。
月の引力に海面が引っ張られて潮位が上昇するのはとてもイメージしやすい理屈ですね。
しかし、月に近い面が引っ張られるのは分かるけど、なぜ反対側も上昇するのでしょうか?
ここで疑問が沸きます。上の図①を見てもらうと、地球の反対側も水面が上昇しています。
しかし、月の方向へ引っ張られるのであれば、反対側は海面が下降しないとおかしいと思いませんか?
実際は反対側も満潮になることで海は一日に二度満潮が訪れます。
結論:月の引力と、地球の遠心力の差
月は地球を中心に公転していると思いがちですが、これは違います。
地球と月はお互い引力により引き付け合っていますので、お互いの共通の重心を中心に周っています。(地球-月系の共通重心)
引力は物体の質量が大きいほど強くなるため、共通重心は月より重い地球の方に存在しており、地球の重心を中心とすると、共通重心は地球の地表よりも内側にあります。
月は共通重心より大きく外側を周るので、結果的に地球の周囲を公転することになります。
地球は月との共通重心を中心に円運動をしている
地球はこの共通重心を中心に円運動をすることで遠心力が生じます。
この遠心力は、月と海面との距離に関係なく、地球のどの場所でも等しい力で生じています。
一方で、月の引力は距離によって異なりますので、その力同士が打ち消し合うと、月の真下の海面は月方向の引力が勝り、反対側は遠心力が勝るため、海面は月と反対方向に上昇することになるのです。
ざっくり上述のような理屈です。
しかしながら、地球に遠心力が生じる仕組みや、潮汐力の仕組み自体様々な文献や記事で紹介されており、それぞれで理論の説明が異なっていたりします。
それらを追求は専門性の高い物理学の世界になるため、本記事の趣旨ではないため言及しません。興味がある方は「潮汐力 遠心力」などで検索して調べてみてください。
図では月の真下と反対側の海の潮位が上がっていますが、実際には地球の自転も影響するため、潮位が上がる海面は図とは異なります。
地球自身がものすごいスピード(時速1,700km)でぐるぐる回りながら、月の引力と遠心力の影響を海面が受けているのです。
ちなみに、地球・月それぞれが共通の重心を中心に円運動をしているのは結果であり、本来はそれぞれに対して落下しています。
地球は月の引力を受けているので、月に向かって落下していますし、
月も同様に地球に向かって落下しています。
リンゴが地面に落下するのと同じです。
地球に落ちてこない月が、実は地球に落下していると考えるととても不思議ですよね。
しかし、リンゴと異なり落下し続けている結果円運動をすることになります。
なぜ落下し続けるかの説明は、以下の月がなぜ地球に落ちてこないかの記事で説明しているので、あわせてご覧ください。
潮が満ち引きする理由まとめ
- 月の引力に海面が引き付けられている
- 月との共通重心を中心とした円運動により地球に遠心力が生じている
- 月の真下の海面は、遠心力より引力が強く潮位が上がる
- 月の真下と反対側の海面は、引力より遠心力が強く潮位が上がる
- 潮位が上がる場所は地球の自転にも影響する